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元養生館館長の小針先生の8年の歩み

※この記事は、
やすらぎの里の元養生館館長・小針先生が
以前書かれた文章を、
現在のサイト用に再編集したものです。


こんにちは、こはりです。

「職業は何ですか?」

そう聞かれるたびに、首をかしげていました。
あん摩マッサージ指圧師?
ヨガ講師?
断食屋さん?

しばらくは「会社員です」と
答えていたこともありました。
断食施設に勤めていると正直に言うと、
怪しいカルトか危険思想家かのように
白眼視されることもあったからです。

今でこそ断食は雑誌やテレビで取り上げられ、
週末断食を楽しむ方も増えました。
それでも「断食施設」となると、
怖い・怪しいというイメージがまだ残っているようです。
だからこそ、ここで自分が何者なのかを
きちんとお伝えしたいと思います。

僕の手に触れるぬくもり、はかない生命

指圧学校からの帰り道、
母から「祖父が転倒し救急車で運ばれた」と連絡が入りました。
病院に駆けつけると、
脳内出血に加え、
過去の脳梗塞の痕跡と脳の萎縮が見つかりました。

じつは、指圧の道を志す前に、
曾祖母と祖母を相次いで亡くしています。
認知症が進んだ曾祖母の手を握ることができなかった。
末期癌の祖母に寄り添えなかった。
その後悔が、ずっと胸に残っていました。

あの日、僕は勇気を振りしぼって
祖父の足を指圧しました。
祖父は「疲れないか?」と気遣ってくれました。

過去に触れてあげられなかった
二人への謝罪の気持ちと、
祖父の回復への祈りを込めながら
夢中で指圧し続けました。
気づけば祖父は、
気持ちよさそうにうとうとしていました。

尊い生命と向き合っているのだという感覚を
決して忘れてはいけない。
そのことを、この日あらためて刻みました。

僕を突き動かしてきたもの

僕は東京の下町に生まれ育ちました。
東京大空襲で親族を亡くした
祖父母の話を聞いて育ち、
幼い頃から戦争への切実な恐怖を抱えていました。
「今夜、空襲が来たらどうしよう」
その不安は子ども心に本物でした。

大学で国際政治を学び、
「戦争は理由なく起きない」
と知識では理解できても、
惨劇が繰り返される現実への
愕然とした気持ちは消えませんでした。

政治システムで平和は作れるのか。
結局、問題は制度ではなく、
それを動かす人間の心にあるのではないかと
気づき始めたころ、ある言葉と出会います。

「平和の問題は必ず食の問題にぶち当たる。
平和のメロディーは
食生活の中で鳴っているんだ」

食養家・桜沢如一の言葉でした。
食に無頓着だった自分に、この言葉は深く刺さりました。
人間の心を穏やかにも険悪にもするもの、
それは毎日欠かすことのできない「食」だった。
それ以来、
「人間にとって自然なあり方とは何か」
が、僕の原動力になっています。

苦しみの数だけやさしくなれる

治療家としての道を歩み始めたころ、
「あなたは治療家に向いていない」
と揶揄されたこともありました。
じつは僕の持論は「職業治療家の撲滅」です。

「治してやる」は、思い上がりかもしれない

病気には、生活習慣に起因するものと、
先天的・遺伝的なものの大きく二種類があります。
前者は心がけ次第で改善できますが、
後者は本人の力ではどうにもならない部分があります。
そうした病気を「不条理な災難」と捉えるのではなく、
人格を深め精神を鍛える契機と受け取れるなら、
「治してやる」という発想が
いかに一方的で傲慢なものかがわかってきます。

僕が考える治療家の役割は
「祈ること」です。
同じ時代を生きる同志として、
お互いの健闘を祈るスタンスで傍に立つこと。
人を変えようとするのではなく、
その人が変わる瞬間にたまたま居合わせる。
そこに徹することが大切だと思っています。

自分も他人も責めず、
裁かず、ゆるして愛すること。
そうしたとき、
生命がキラキラと輝き出すのを感じます。
これを治療と言わずしてなんと言いましょう。

行住坐臥、一切の事勢が道場になる

やすらぎの里に勤めて8年。
断食の現場で多くのことを学びました。
断食はきわめて個人的な行為で、
誰かにしてもらうものでも
代わってもらえるものでもありません。

「さあ治してくれ」
という姿勢では治らない。
むしろその心が
病気を作り出しているのではないかと思います。
「いつでも頼ればいい」
という構造は、
内なる力をどんどん弱体化させていきます。

生きることの基本、
つまり呼吸・食事・排泄・運動・精神活動を
もう一度見直し、
生命の働きに沿った自然性を回復させていくこと。
文字通り「生を活かす」ことが土台になければ、
人間として輝くことはできないと感じています。

断食は、自動的に瞑想へと誘う

断食中は、
絶えず押し寄せる空腹感と
刻々と変化する体の状況を、
つぶさに感じざるを得ません。
これはまさに瞑想そのものです。
断食は生理的なデトックスであるとともに、
心のデトックスでもあります。
世界中の宗教が共通して断食を
「行」としているのも、その証左でしょう。

合気道が教えてくれたこと

青春時代、
合気道に全身全霊で打ち込みました。
投げつ投げられつの稽古は、
お互いを活かし合うことに専念するものです。
開祖・植芝盛平大先生の言葉に
「稽古は愉快に実施するを要す」
とあるように、
そこには生命が喜ぶ楽しさがありました。

合宿の一週間が、人生を変えた

午前・午後・夜間と稽古を重ね、
下級生は掃除から食事の配膳まで
休む暇なく動き回る。
死んだように眠り、また朝が来る。
ところが日を追うごとに衰弱するどころか、
体力がみなぎり感覚が研ぎ澄まされていくのです。
完全な消化吸収、完全なエネルギー消費、
完全な呼吸、完全な睡眠。
「今を生きる」人間が
最高度に真価を発揮する時間でした。

帰りのバスの中でいつも思っていました。
こんな生活がずっと続けば、
どれほど健康になれるだろうかと。

僕がやすらぎの里に来た理由

大沢剛先生の著書に感銘を受け、
やすらぎの里以外の選択肢が考えられなくなりました。
ところが求人に問い合わせると、
すでに採用が決まっていると言われました。
それでも
「大沢先生の考えに感化された、ここしかない」
という思いをメールにしたため、
半ば強引に送りました。
その熱意が届いたのか、
「履歴書を送っていいですよ」
と返事をいただき、今日に至ります。

振り返れば、武道への専心も、
フリーター時代の警備員として
1時間立ち続ける「立哨」も、
すべてが今につながっていたと感じます。
立哨は今思えば、立禅・瞑想そのものでした。
人生に無駄はない、とつくづく思います。


やすらぎの里が大切にしてきた考え方を
さらに知りたい方は、以下もご覧ください。

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1件のコメント

  1. 読み始めましたら、終わりまで一気に読ませて頂きました。たくさんの事、考えさせられました。
    やすらぎの里で過ごさせて頂いた日々を、今、懐かしく思い出しています。
    夫と、娘と、妹と、友人と、伺いましたのは数回ですが、いつも心の中は機会があればまた伺いたいと思っていました。夫も私も年齢が増しました。
    今は、ふたり穏やかな日々を過ごしております。
    どうぞ、養生館の益々のご発展を祈っております。

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