私は22年前に伊豆高原で「やすらぎの里」を始める前、八ヶ岳の山麓、山梨県小淵沢で「ライフスタイル改善センター・フォルス」という施設をやっていました。
「食事」「運動」「心身のリラックス」「自然環境」を四つの柱として、自然治癒力を高め、慢性病やストレス病を治療し、その体験を通じてライフスタイル(生活習慣)を改善する。
そうしなければ病気は治らないし、根本的な解決にはならないと強く思っていました。
滞在されるゲストの方も自分を変えようと意気込んでくる方が多く、私もそれを一生懸命に応援しようと一緒にがんばっていました。
しかし、いい結果を出そうと必死にやるほど、思うように良くならない。
もしかしたらその「がんばり」こそが、人を疲れさせ、病気や悩みの原因になっているのではないだろうか・・・。
がんばること自体をやめて、自然な時間の流れに身を委ね、ぼ~っとしてみたら、そこに本当の心のやすらぎを見いだせるのではないか。
やすらぎを感じられる場でゆったり過ごせたら、それぞれが自分の中に元々ある、やすらぎに気づけるのだと思ったのです。
私に「やすらぎ」というキーワードを与えてくれたのは、25年前にゲストして訪れていた年配の男性です。
当時70歳くらいだったその男性は、やり手の経営者として仕事中心の生活を送ってきた方でした。
働きづめに働いて、ある日、自分が膀胱癌であることを知りました。
思い切りのいい人で、会社を処分して那須高原に土地を買い、自給自足の生活を始めたそうです。
それまでとは180度違う生活、価値観を選んだのです。
「大沢さん、僕はそのとき考えたんですよ。幸せってなんだろう。走り続けて、いったい何のために働いてきたんだろうって。それで気づいたんです。幸せっていうのは、結局“心のやすらぎ”なんだよね。」
私は走り続ける人生を歩んできた人が、病気を経て辿り着いた境地に、はっとさせられました。
「そうか、自分が求めていたものはこれだ。」
そのときから「やすらぎ」が私の求めるテーマとなったのです。
多くの人がストレスを抱え、いつも疲労感じている現代。
日々の生活から少し離れて、安心して心と体の声を聴きながら過ごせる場にしよう。
そんな思いで八ヶ岳から伊豆高原に移転し、施設の名称も「やすらぎの里」と変えたのです。
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