「絶食療法と排泄機能」
絶食療法にはさまざまな効用がありますが、その中の一つに老廃物の排泄機能が高まるということがあります。これは実際に絶食療法を経験したことがある方なら実感された方も多いのではないでしょうか。なぜ絶食療法をおこなうと排泄機能が高まるのでしょうか。人間の体には生体の機能を一定に維持しようとする恒常性維持機能というものがあります。これは主に内分泌(ホルモン)系や自律神経系がその役割をしています。絶食中は栄養分が入ってこないので、それでも身体はバランスを取るために老廃物だけでも出して、何とか身体をいい状態に保とうとします。その結果、排泄機能が高まり、色々な老廃物が排泄され、身体が浄化されるのです。
それではどんな老廃物が出るかというと、黒いタール様のにおいのきつい宿便が大量に出たり、色の濃い尿が出たり、普段と違う臭いのする汗が出たり、舌苔が厚くなったり、口臭がひどくなったりします。通常は尿や便として排泄されるのですが、そこからうまく排泄できない人は、湿疹などとして皮膚から排泄される場合があります。
絶食療法中は胃腸が休息し本来の機能を取り戻すので、ストレスや食べ過ぎにより傷ついた腸の粘膜がはがれ落ち新しい粘膜に新生します。また腸の粘膜が新生すると善玉の腸内細菌が勢力を拡大し悪玉の腸内細菌が死滅し排泄されやすくなります。絶食中は腸が空の状態でも腸の蠕動運動がおこりますので、はがれ落ちた粘膜上皮や悪玉の腸内細菌などが排泄され、腸内の大掃除になります。
現代社会は人類が未だかつて経験したことのない飽食の時代が続いています。身体に必要な栄養も取りすぎてしまうと生活習慣病などの原因になります。また食品の中には様々な添加物が入っていたり、食品の容器から溶け出す環境ホルモンの害も話題になっています。このように質的にも量的にも必要以上の物、有害な物を取り入れているのです。また、都市の生活では排泄の働きを弱くする要因がたくさんあります。例えば、食生活の洋風化や運動不足、ストレスなどにより便秘の人が多くなっています。都会ではほとんどの所に冷房が完備されており、日常生活で汗をかくということがあまりなくなっています。その冷房の冷えにより腎機能が低下し、より排泄機能を弱めてしまいます。
よく雑誌などでビタミンが足りないとか蛋白質が足りないとか記事になっていますが、今の日本で栄養が不足して病気になっている人がどれだけいるでしょうか。それに比べて偏った栄養の取り過ぎで病気になっている人の多いこと、生活習慣病といわれるもののほとんどが栄養の取りすぎと言っていいでしょう。このような時代は不足している栄養を探すのではなく、過剰になっている栄養をいかに減らしていくか、また体の中にたまった老廃物をどのように排出するかといったことを考えなければいけないときだと思います。
このように人間の身体を見ていくと、今人間の体に起こっていることと地球環境に起こっていることに共通の問題が見つけられます。人間の身体では過剰な栄養と添加物などの有害な物質がたまりすぎて、不完全燃焼を起こしています。ストーブにたとえると薪を入れすぎて燃えなくなり、煙ばかり出ているような状態です。このようなときに必要なことは少し薪を取り出して、空気をたくさん入れてやることです。この場合の薪を取り除くのに当たるのが絶食療法で空気を入れる役割をするのが運動です。
地球環境も人間の絶え間ない欲求のために、資源の消費が激しくなり、二酸化炭素が多くなり温暖化を招いたり、土に帰らない素材(プラスチックなど)が増えたおかげでゴミの問題が深刻になっています。特に今世間を騒がしているダイオキシンの問題などはプラスチックを燃やすと有害物質が出るし、そのまま捨てるとごみの量がとてつもなく増えるといった、まさに八方ふさがりの状態で、もう減らしていくしか方法がない状況に追い込まれています。本当に必要な物だけ残して余分な物を削り取っていく生活が大切になってきます。身体だけではなく生活にもダイエットが必要な時代のようです。
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