「息することは、生きること」
食品の安全性や水の汚染が騒がれている今日、食べ物や飲み水に気をつけている方は多いようですが、呼吸に気を使っている方はまだ少ないようです。1~2週間食事をとらないでも水さえあれば命は保てますが、呼吸は3分間止められただけでも生命の危機になります。このように呼吸はとても大切なことにもかかわらず正しい呼吸法を改めて意識することもなく、なんとなく呼吸しているのが現状だと思います。
どんなに身体にいい食物をいただくにしても、もしその人が浅い呼吸で酸素を充分に取り入れていない場合、食物が不完全燃焼して十分な消化吸収がおこなわれないのです。食べ物と酸素の関係は燃料と酸素の関係と同じなのです。どんなに上等の薪であろうと、詰め込みすぎたり、酸欠状態の場合は不完全燃焼に終わります。それと同じで私たちの身体はよい食べ物、よい水を摂取しても酸素が充分に体内に入ってこなければそれらの効果が発揮されないのです。
また、呼吸は身体だけではなく心にも大きな影響を与えてくれます。内臓は全て自律神経の支配を受けており、自分の意志では自由にコントロールできないのですが、内臓の中で唯一、肺だけが自分の意志の力で動かすことが出来ます。無意識のうちに働く自律神経と自分の意志で働く随意神経の両方から支配を受ける肺は、意識と無意識をつなぐ掛け橋になる臓器なのです。
イライラしたり、落ち込んだりしたときに自分の意志で感情や気分を切り替えていくことは大変難しいものがあります。しかし、そんなとき無理に感情を変えるのではなく、深くゆったりとした呼吸に切り替えることが出来れば、呼吸の変化につれて気分も徐々に変わってきます。呼吸をうまくコントロールできるようになると、自分で自分の感情をコントロールすることが可能になるのです。
呼吸法は数多くの種類がありますが、大切なことはしっかり息を吐ききるということと、丹田を意識するということです。丹田とはおへそから約9~15cm位下にあります。丹田をとらえるにはまず、左手を真横にして、おへその上に親指をのせます。その左手の小指の下に続けて右手を真横にして並べます。その右手が覆っている場所が丹田です。正確にはそこから肛門に向けて少し身体の内側に入ったところですが、始めはイメージしやすい身体の表面で結構です。
丹田は訓練していないとほとんど動きません。始めは息を吐くたびに手で丹田を押さえ、その周辺の細胞に息を吐くとき丹田をへこませることを記憶させ、それが習性になるように努力して下さい。
「座位の呼吸法」
座る姿勢は正座か椅子にかけるか楽な方を選んで下さい。ベルトをきつく締めている方はを少し緩めておこないます。
1、両手を丹田のところに当てて、目を軽くつぶります。息を吐くときに丹田が簡単にはへこまないので、肩やみぞおちに力を入れてしまう方が多いのですが、絶対に力を入れないで下さい。肩やみぞおちに力が入ると、呼吸がしにくくなって、正しい呼吸法を続けられなくなります。(椅子に座った場合は、椅子に後ろまで深く腰掛けると、丹田にうまく力が入りませんから、浅めに腰掛けて、腰を伸ばし、肩とみぞおちの力を抜きます)
2、鼻から息を吐きながら丹田を引き、ゆっくり前かがみになりながら、お腹の皮がへこんで腰骨の方に着くというイメージを描き、丹田を両手で軽く押して下さい。そして、苦しくなったら緩めます。吸う息は入るに任せます。
大切なポイントは、両手で軽く押さえた丹田をへこませて、その丹田のお腹の皮が腰椎の方にくっついていく有り様をイメージしながら、息を吐く努力を続けることです。そして最後はヒップに軽く力を入れて締めます。その後、力を緩め、自然に息を吸います。息は吐いた分が入りますので、無理に吸う必要はありません。とにかく、息を吐くこととお腹を引いてへこますことだけに重点をおきます。
「寝ながらの呼吸法」
1、まず、仰向けに寝ます。布団の上でも畳の上でも、絨毯の上でも結構です。
2、仰向けに寝たら両手を丹田に当てます。それで両膝を立てます。立てた膝と膝をしっかり付けますが、足先は開きます。そして、鼻から息を吐きながら、丹田に当てた両手で丹田を軽く押して、出来るだけへこませます。苦しくなったら息をゆるめて自然に吸います。この寝ながらの呼吸法は、気持ちが良くて夜などはすぐに眠ってしまいます。寝付きの悪い方、不眠症気味の方にぴったりの呼吸法です。
そもそも、寝てから考え事をしたり、興奮すると血液が頭の方にいって眠れなくなります。寝ながらの呼吸法をおこなうと脳の方にいっていた血液が下がり、全身に循環してくるので、いい気持ちになって眠くなるのです。眠れないときはこの呼吸法を練習するいいチャンスですから、是非トライしてみて下さい。
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