養生館には、いろいろな人が来ます。
かなり切羽詰まった状況の人もいます。
そんなときは、滞在に専念してもらう、プログラムをこなしてもらうことを勧めます。
「悩みに真正面から向き合わない」ということでもあります。
一見すると、真正面から向き合わないなんて、不真面目で、怠けているような感じがします。
しかし、弱り切った心身で悩んでも、ネガティブに傾くばかりで、つぶれてしまいます。
それは本心に反した一時の気の迷い。
それに振り回されない。
「身体を立て直し、本心を頂き直す」
養生の根本がここにあります。
とにかく与えられた命が尽きるまで生き抜いていくこと。
これが天の意志であり、自らが望んだ生き方なのだろうと思います。
「世に智慧のある人の病中ほど、あさましく、物苦しいことはなきことなるぞや。来し方、行く末のことなども際限なく思い続け、看病人の好悪などをとがめ、旧識同伴の足の遠のくを恨み、生前には名聞の遂げざるを愁え、死後は長夜の苦患を恐れ、目を塞ぎて打臥し居たるは、殊勝に物静かなれども、胸中騒がしく、心上苦しく、三合の病に、八石五斗の物思いあるべし」
白隠禅師はこのように言っています。
知識や学問がある人ほど余計に、病気をした時にあれこれ考えて、かえって苦しくなって、治るものも治らなくしている、ということでしょう。
考えれば考えるほど、むしろ重苦しい気持ちになって、ますます心身を弱らせてしまう。
「病気になったら、わたしが一番最初に気をつけることは、それは、どこの病院に行こうか、ということではなく、何の薬を飲もうかということでもなく、一日中、病気のことで頭をいっぱいにしないことである。」
99歳まで生きた宇野千代の言葉ですが、本当にその通りだと思います。
合気道をやっていたので身に染みていますが、真正面から相手の力を受け止めたら、ひとたまりもありません。
しかし、半身に構えて、斜に受け流せば、うまく調和できます。
「地獄極楽は胸三寸にあり」
養生館のテーマは、やはり「マインドフルネス」なのだと思います。
リトリートというかたちで、いったん日常を離れ、滞在まるごとマインドフルネスに過ごすことで、実生活でも応用しうる多くの気づきが得られることでしょう。
肉体の健康
精神的な成長
ビジネススキルの向上
僕が求めてきたもの、すべてが一度に実現するもの。
それが「マインドフルネス」だということに思い至りました。
肉体の健康を求めるあまり心が頑なになった。
ビジネススキルは向上したが心身を病んだ。
精神的な志向と現実生活の折り合いがつかなくなった。
ということが往々にしてありうるものです。
いわば、心身の健康と処世術、これをバランスよく両立することの難しさです。
「マインドフルネス」
『今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、 評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること』(日本マインドフルネス学会による定義)
真理はいつでもシンプルであるという実感から、味わい深く丁寧に生きること、人間としてあるべき、あたりまえの生活を行っていくということです。
いかに動き、いかに食べ、いかに休むか。
養生館では、少食多動を基本として、生命のみずみずしさを取り戻していきます。
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