「ホルモンと自律神経」
人間の身体には恒常性維持機能(ホメオスタシス)というものがあって、身体の状態を常に一定に維持してくれています。この機能を主に担っているのが、自律神経とホルモンです。自律神経は内臓に分布し内臓を働かせる信号を伝達します。神経という位ですから、神経の繊維が内臓につながっていて、大脳から信号をすばやく伝えます。
これと反対に時間はかるものの、長期間にわたって身体の機能を安定させているのがホルモン(内分泌)です。ホルモンも大脳からの命令を受けホルモン分泌を促進させる物質が出され、身体の中にいくつかあるホルモンを分泌しているところに届き、その刺激でホルモンが血液中に分泌され血液の流れによって全身に作用します。
自律神経もホルモンもこれらの働きを司る最高中枢は大脳の視床下部というところで、働きによってそれぞれ役割を分担しているのです。このような関係があるので、ホルモンと自律神経というのは密接な関係があり、片方の働きが乱れるともう片方の働きにも変調をきたしやすいのです。
「自律神経と更年期障害」
ホルモンの働きが自律神経に影響を与えている例として分かりやすいのが更年期障害です。更年期障害は閉経により、女性ホルモンの分泌が低下し、ホルモンのバランスが乱れて、その影響で自律神経の働きが変調をきたして起こるものです。主な症状であるのぼせや発汗異常、動悸、めまい、耳鳴りなどは自律神経の働きが乱れて起こるもので、一種の自律神経失調症ともいえます。症状を自分にとって都合の悪いこととばかり考えないで、更年期を身体や人生の転換期ととらえ、これから先の人生をより良いものにするために必要な調整をしていると考えることができれば、更年期障害ともうまく付き合っていけるのではないでしょうか。
「若い女性や男性も更年期障害になるの」
更年期障害といえば、50歳前後になり閉経を迎えた女性がなるものと相場が決まっていたのですが、近ごろは若い女性や男性にも更年期障害に似たような症状を訴える方が増えています。
若い女性では30歳前後、男性では50歳前後に多く見られます。特にこの時期は年齢的な体調の変わり目だったり、仕事や人生の転換期に当たることが多く、自分に対する自信を失ったり、将来の不安と直面することもあり、それら心理的な問題が体調の悪さにより拍車を駆けることになるのです。
「若い女性に無月経が急増」
今、若い女性で生理が来なくなる無月経が増えています。フォルスに来ている若い女性の3分の1は生理が不順で10人に1人位の割合で無月経の人がいます。無理なダイエットのしすぎ、過度のストレス、食生活の乱れ、夜勤などの不規則な仕事など原因はさまざまです。一般的な治療法としてはホルモン補充療法といって、女性ホルモンを注射して生理を起こさせる方法があります。体調の崩れがあまり大きくない場合ですと3ヶ月位で定期的に来るようになるのですが、体調の崩れが大きい場合注射をしても生理が来ないとか、治療を終えるとまた止まってしまうという方も多いようです。また、ホルモン治療は副作用が伴う場合が多く、むくみや体重増加、吐き気などが起こり治療を途中で中断してしまう方も多く見られます。
動物は危機的な状態になるとできる限り自分の種を残して種族を保存させようとする本能があります。人間も同じで、先進国の人ほど生殖能力が衰え、途上国の人ほどどんどん子供ができる傾向があります。食べ物に困った経験のない若い世代は、身体に危機を感じたことがないので、自分の種を残そうとする本能が弱くなっていても不思議ではありません。
「断食療法の効果」
これらホルモンバランスの崩れに、断食療法はどんな効果があるのでしょうか。断食は身体に一時的な飢餓状態というショックを与えます。身体はそのショックにより、身体の機能を総動員させてバランスを保とうとします。特にホルモン、自律神経、免疫系など身体の機能を一定に維持している働き(恒常性維持機能)は、その働きを最大限に発揮しバランスを取ろうとします。その結果、ホルモンや自律神経の働きが整い、免疫系の働きが強まり、様々なストレスに対する抵抗力がついてきます。
また、断食が明けて回復食を食べていく段階で、生きていることの有り難さに気付き、自分を生かしてくれているすべての物に感謝したくなるような気持ちになるのです。そのような体験が自分の周りの人との付き合い方を見直すことになり、ストレスになること事体が少なくなってくるのです。
断食は生きていく上で本当に大切なものを見失い、必ずしも必要でないものを手に入れるために、余りにも大切なものを犠牲にしている現代人に、自分に本当に必要なものは何かを気づかせてくれる貴重な体験になります。ダイエットが必要なのは身体よりもむしろ自分の生き方の方かもしれませんね。
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