「心身一如」
ストレスが長期間続いていると自律神経やホルモンの働きが乱れたり、身体の緊張が続いて肩や背中が凝ってきます。また、ストレスを解消するためにお酒を飲んだり、過食したりすることにより肥満や糖尿病など生活習慣病を引き起こす原因にもなってきます。
昔から心身一如といってこころと身体はひとつらなりのもので、こころに問題を抱えていると身体の調子が悪くなりやすいし、身体の調子が悪いと、こころの問題も生じやすいといえます。
東洋医学ではストレスの問題も心理面からだけでなく身体の面から治療したり、身体に現われている症状を心理的な面から治療することもあります。またストレスを受けやすい体質を見分けて、身体を治すことによりストレスに強い体質にしたり、食べ物や運動、生活習慣などからもストレスに負けない身体つくりをアドバイスします。
「東洋医学からストレスを見ると」
東洋医学ではストレスがたまっている状態を「肝気鬱結(かんきうっけつ)」または「気滞」といいます。これは全身に気をめぐらせている肝の働きが悪くなり、気が滞って渋滞している状態です。
怒りの感情を支配する肝の働きが悪くなっているので、イライラして怒りっぽくなったり、気が滞ってたまってくるのでお腹の膨張感、のどの詰まり感を感じたり、背中にある肝のツボに反応が出て背中が凝ってくるなどの症状がでてきます。このような症状が頻繁にある人は、気のめぐりが悪くストレスをため込みやすい傾向をもっているともいえます。
「ストレスの診断法」
治療でストレスの状態を調べる場合、肩甲骨の間から背中の筋の緊張度や首の前面の胸鎖乳突筋の緊張度、腹筋の緊張度、脈の緊張度などを総合的に判断して見ていきます。筋の緊張が強く、脈も弓をはじくような硬い脈になら本人の自覚がある、なしにかかわらず身体はストレスを感じているといえます。
治療していると自分ではストレスはないと思っている人でも身体がかちかちに緊張している人もたくさんいます。特にいつも元気で活動的な人ほど、ストレスをため込んでいることに自覚のない人が多いようです。あまり身体のことに神経質になるのも困ったものですが、身体の状態がまったく自覚できていないというのも危険な状態でブレーキの壊れた車に乗っているようなものです。
「ストレスの治療法」
気滞の治療でよく使われるのは、気をめぐらせる働きをコントロールする肝と関係するツボです。気が頭にのぼって怒りっぽくなったり、いらいらする症状に効果のある足にある太衝。ストレスが蓄積すると硬く緊張した反応のあらわれる背中の肝兪、わき腹の期門。のぼせや頭痛に効果のある頭のてっぺんの百会などです。
またマッサージで背中の緊張をゆるめたり、首の凝りをほぐしてあげても気のめぐりがよくなるのでストレスからくる色々な症状が緩和されます。
心身一如の考え方は治療だけに限らず、食事や生活上のいろいろな面でも使われています。
食事ではシソやミントなど芳香性のある食べ物がストレスを発散する効果があります。また、全身に気を巡らせる肝の働きをよくする食べ物ではホウレン草や小松菜などの青菜や酢の物や柑橘類など酸味のある食べ物があり、これらの食品を意識的に多く取るとストレスに強い体質作りに役立ちます。
その他運動では、ストレッチで肝の経絡が通っている脇を伸ばしてあげても肝に刺激が入りますし、エアロビクスやダンスなどで思いきり身体を動かすと滞っている気を発散させることができます。それ以外にもサウナで汗を流したり、カラオケで歌ったりするのも効果的です。
元気や生命力そのものの気もめぐりが悪くなり滞ってしまうと身体に害を与えるものになってしまいます。普段から気のめぐりをよくして、滞らせないようにするとストレスからくるいろいろな病気を解決することができるのです
「心を問題は身体から治す」
心理的な問題を解決する方法には精神科で投薬を受けたりカウンセリングを受けるというのが一般的な方法ですが、心理的な問題はまさにストレスそのものですから必ず身体にも影響が表れてきます。そのような場合、身体の治療と平行して心理療法をおこなうか、とりあえず身体だけでも健康な状態にしてから心理療法をおこなうほうが効果が上がりやすいものです。
心理的な問題を抱えている人というのは、自分で自分の心を思うようにコントロールできなくなって悩んでいます。その心を意識でコントロールしようというのは人によっては無理があります。心と身体はひとつらなりのものです。ストレスでがんじがらめになって、どうしていいかわからない人は東洋医学の知恵を活用して、身体から変えてみることも必要です。
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