「温泉保養のすすめ」
家のお風呂に温泉の薬効成分を溶かして入る「インスタント温泉のもと」、お試しになったことがある方も多いのではないでしょうか。確かに温泉のお湯そっくりですが、本当の温泉にはそれだけではないプラスαの魅力があるような気がしませんか?都会の雑踏を離れ、電車に揺られて辿り着く山ふところの温泉宿。うっそうとした緑の樹々、鳥の声、虫の音、湯けむりにかすむ景色…。私たちは目や耳や鼻ですでに「温泉」を味わい、心と体が解放され始めていることに気づくはずです。体全体が自然環境の影響を受け、内側から変化を始めているのです。
「転地効果」
環境変化が体の調子を整え健康を増進させる働きを「転地効果」と呼びます。転地効果は、普通滞在5~6日で活発になりますが、1カ月を過ぎると薄れてしまいます。体がしだいに環境に慣れて、刺激として感じられなくなってしまうためです。ですから、理想的な転地効果を得るには、100km以上離れた温泉地に、4~5日から1週間程度滞在するのがよいとされています。自然が体におよぼす影響はこのように奥深く、多彩です。こうした自然のパワーを積極的に利用し、病気治療や健康づくりに役立てようとする試みとして、近年特に注目されているのが、タラソテラピーと森林浴です。海辺の気候や自然の効用をとり入れた治療法が「タラソテラピー」です。タラソテラピーは、特に気管支喘息やアトピー性皮膚炎に効果があります。また、森の中を散歩していると、木の香りで心が落ち着いてくるのを感じるでしょう。これは樹木から発散されるフィトンチッドと呼ばれる、揮発性のテルペン系物質によるアロマテラピー効果です。フィトンチッドは、殺菌・防腐作用をもち、体に対しては血圧を下げたり気分を安定させる効果があります。また、木々のおかげで、森の空気はいつもみずみずしく保たれています。森の中、特に滝や川の近くに多いマイナス空気イオンには、心身を鎮静化させる効果があるのです。森林浴は、こうした森の恵みを五感で味わいながら、心身をくつろがせるものです。リラックスした気分でゆったりと呼吸しながら、森の中で3時間以上過ごしてみましょう。
「自然治癒力を高める温泉保養」
温泉の重要な化学的効果として見落とせないのが「総合的生体調整作用」と呼ばれるものです。不規則な生活や過剰なストレスが続くと、体内のリズムが乱れてさまざまな病気を引き起こしてしまいます。定期的な入浴によって体によい刺激を繰り返し与えることになるので、不規則な生活で失われた体のリズムを安定させることができます。これが「総合的生体調整作用」です。つまり、特定の効き目があるというのではなく、正常な状態へ調子を整えていくという作用です。ですから「胃酸の高すぎる人は低く、低すぎる人は高く」というように、場合によっては全く逆の効果をもたらすこともあるわけです。温泉は、特定の病気に対する薬というより、さまざまな薬効成分や定期的な入浴刺激による相乗効果によって、ヒトの自然治癒力を高めるという総合的な効果のほうがより大きいといえるでしょう。
「入浴そのものがもつ効果」
入浴そのものがもたらす効果も、温泉の大きな魅力の1つです。入浴の効果を科学的に解説すると、お湯のもつ「浮力」「水圧」「温熱」という3つの物理的な力が、入浴の際体におよぼすさまざまなよい作用、ということができます。お風呂に入るとホッとするのは、体の重さから解放されるからにほかなりません。浮力で体が軽くなるお湯の中では地上に比べて体を動かすのがずっと楽になりますから、肥満、腰痛、関節痛などの人は、特に「浮力」の効果を実感するでしょう。また、お湯の中では、水の圧力で体が押され、天然のマッサージとでもいうべき状態になります。登山やスキー、ゴルフなどのあと、近くの温泉に入ると疲れがとれるのは、水圧の働きでマッサージを受けたときと同じ効果が得られるためなのです。
よく、二日酔いの朝のシャワーは熱く、疲れた日の深夜のお風呂はぬるめでゆっくり、などといいます。熱いお湯は体を目覚めさせ、ぬるいお湯は体と神経を休息させることを、私たちは経験的に知っています。このような「温熱効果」のもたらす現象は、実は「自律神経の働き」によるものなのです。 自律神経は、2種類の回路をもっています。1つは、体を活動に都合のよい状態にもっていく交感神経。もう1つは、体を休息状態へ導く副交感神経です。熱いお湯の刺激は、体温を上昇させると同時に脳に「戦闘開始」の判断を出させ、ぬるめの体温に近いお湯は「休息OK」のサインを出させます。その結果、体をリフレッシュさせたり精神疲労を取り除いたりする、というわけなのです。
「やすらぎの里の温泉」
やすらぎの里の温泉の泉質はアルカリ性単純泉です。 アルカリ性の温泉は刺激が少なくなめらかで入り心地がよく体力のない方や高齢者にも向きます。 病後回復期の静養、手術後の療養、骨折・外傷後の療養に効果があります。飲泉は軽い胃腸炎によく、尿量が増えます。わが国では古来から「中風の湯」「神経痛の湯」など名湯が多いといわれます。
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