「生命力(腎)が弱っている」

 「生命力(腎)が弱っている」

 最近、生理がこない無月経の若い女性が増えています。極端なダイエットなどにより生理が止まってしまい、その後体重が戻っても生理は止まったままという人が多いようです。若い女性の場合、生理がきちんとあるということよりも痩せた身体の方が大切だと思っている傾向もあります。また生理は来るものの周期が不順だったり、子宮内膜症のような婦人科の病気も多くなっています。

 これは女性だけの問題ではなく、男性も精子の数が少なくなったり活動性が弱くなっているようです。また、バイアグラが登場してから、勃起不全(ED)という病気が一般にも知られるようになりました。動物の基本的な能力である生殖能力の低下が、世代を超えて広がっているのです。

 農薬や添加物、様々な化学物質などの環境ホルモンなどが、生殖に関係する女性ホルモンや男性ホルモンの分泌を低下させているという報告もあります。ただ問題は環境ホルモンだけではなく、食生活、運動不足、心理的なストレス、自然環境などライフスタイル全体といえるでしょう。

 東洋医学では生殖機能を腎(西洋医学でいう腎臓とは違う働き)の弱りとしてとらえます。東洋医学でいう腎の働きは生殖機能のほかに、骨、髪、耳、腰などの機能も含まれています。腎の働きが弱くなると、骨がもろくなったり、髪が薄くなったり、耳が聞こえにくくなったり、腰が弱くなったりします。年をとるとだれにでもおこる老化現象なのですが、年齢より早い時期にこれらの症状が進行すると腎が弱っていると見るのです。また、元気や気力の源ともいわれ腎の働きが弱ると疲れやすく元気がなくなります。腎には先天の気(先天的な生命力)が宿り、その人の生命力をはかる大切なバロメーターです。腎の働きが強い人は生命力が旺盛なので病気になっても治る力が旺盛なので回復が早いのです。

 東洋医学ではこのように生殖機能以外でも重要な働きを担っている腎が、若い人を中心に弱くなっています。腎の働きを弱くしているのは冷えと過労、夜更かし、食事が原因と考えられます。腎は身体を温める働きもあるのですが、冷える状態が長く続くと腎に負担がかかり腎の機能が低下してきます。暖房や家の作りがしっかりしてきたので、冬に冷えることは少なくなってきたのですが、クーラーの普及で夏に冷えるようになりました。夏は汗腺が開くなど身体が開放的になっているので、簡単に冷えに入られてしまいます。また、一年中冷たいジュースや牛乳などを飲んでいるので、身体の内側からも冷えてしまいます。

 腎は一日の中では特に夜に働くところだといわれています。仕事や遊びで連日夜遅くまで動いていると腎にゆとりがなくなり、腎の機能が低下してしまいます。自然な暮らしをしている動物から比べればほとんどの人が夜更かしといってもいいでしょう。

 食べ物でも人間は生命力のある食べ物を食べていません。生命力のある食べ物とは生きているもの、またはついさっきまで生きていた食べ物のことです。野生に暮らす動物はご馳走こそないものの、生きているものだけを食べています。ところが人間はグルメと称してはいるものの、遠くの国から何日もかかって運ばれてきたものや、冷凍食品、何日経っても腐りもしない化学薬品のような食べ物ばかりを食べています。これでは生命力が低下してもおかしくありません。

 また、都会の生活では人間を取り囲むものは命のないコンクリートやアスファルトなどばかりです。生まれたときからペットとして飼われているテラでさえも、調子が悪くなると土の上にうずくまり病気を治しています。そんな大自然の生命力をコンクリートやアスファルトが遮っているのです。さらに排気ガスや騒音、電磁波などが合わさってくるのですから、生命力が低下しないほうが不思議といってもいいくらいです。

 始めにいったように腎は先天の気が宿るところといわれ、先天的な要素がかなり大きいところです。しかし、先天的に弱くても上手につきあっていけばいいのです。とかく先天的に腎が強い人は、身体が丈夫な分だけつい無理をしがちです。それで丈夫な身体をもちながら大病になったりするのですが、弱い人はかえって気をつけるので長生きだったりします。

 まず、冷えに関しては下半身を冷やさないように注意します。冷たいものの取りすぎも内側から身体を冷やすことになりますので、できるだけ温かいものをとるようにしましょう。どうしても冷たいものを飲みたいときは、量を控えめにするといいでしょう。夜は早めに寝ることができるといいのですが、仕事の関係で無理な人はせめて疲れを感じているときだけでも早く寝るようにしましょう。自分の健康を管理することも大切な仕事の能力のひとつです。

 すでに生理が止まっていたり、骨、髪、耳、腰などに強い症状が出ていて、かなり腎が弱っているような人は漢方を服用するのもいい方法です。漢方で男性の精力剤といわれているもののほとんどは腎の働きを高める薬です。まず普段の生活を見直して、それでも症状が治まらない場合は漢方を始めてみるといいでしょう。

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