検査が終わると、病室に運ばれ、
たくさんの点滴と酸素マスク、心電図モニターがつけられた。
すぐに脳外科の医師に呼ばれて、
病状の説明があった。
「奥さんの病状は、
もやもや病による脳出血だと思われます」
「脳の血管造影をしてみないと確定できませんが、
たぶん間違いありません」
“もやもや病”は、
正式には「ウィリス動脈輪閉塞症」という。
脳底動脈が狭窄して、脳の血流が不足するため、
その周りの細い血管が異常に発達して、
たばこの煙のようにもやもやした状態なる。
子供は一過性の脳虚血で発症するが、
大人は脳出血で発症することが多い。
アジアの女性に多く、その中でも、
特に日本の30~40代の女性に多い。
そのとき、かみさんは39歳、
まさに、典型的な発症例だった。
病気の原因は、今だ不明で、
先天性の血管奇形という説や
生後になんらかの原因があるとする後天説がある。
兄弟や親子間での発生が約10%弱と多いことや
日本人に多く発生することなど遺伝的な要素もあり、
現在では遺伝子で規定された要素に、
何らかの後天的要素が加わって発病する説が有力だ。
歌手の徳永英明さんが、
この病気になって、世間に知られるようになった。
かみさんが落ち着いて寝た頃に、
子供たちが着いた。
子供たちは、目の前にいるのが、
母親だというのがピンとこないようだ。
「いいか、お前たち、
今日は、お父さんここに泊まるから、
お前たちは家で留守番たのむぞ」
とまどったような、
少し淋しそうな顔で、
「わかった・・・。」と、うなずいた。
その夜は、ときどき苦しそうにするかみさんの横で、
一晩中、心電図モニターを眺めながら夜を明かした。
「今日のやすらぎ」
満開に咲いた、藤の花。
なんとも日本らしい、
優雅さがありますね。
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