88歳になる祖父が、7月に肺炎を患って実家の近くの病院に入院していました。
入院するまでは畑仕事もしていたくらいですが、入院してしばらくすると歩けない状態になってしまいました。
日増しに衰えていく祖父の状態を見て「特にこの頃は日によって体調がかなり変化するので心配だ」と父から連絡をもらいました。
父親が私に実家のことで相談するときは、かなりせっぱつまった場合が多いので、仕事のスケジュールをなんとか調整して8月に1泊で実家に帰りました。
仕事が忙しかったので実家の岩手に帰るのは3年半ぶりでした。
実家に着いてすぐ、病院にいる祖父に会いに行きました。
病室に入ると、ベットに横たわっていた祖父はすっかり痩せこけて鎖骨や肋骨が浮き出して、まさに骨と皮だけの状態でした。
病室に入った私を見つけた祖父は思わず泣き出しながら私の手をしっかりとにぎりしめました。
そして、その手を頬ずりしながら、かすれて声にならない声で私に話しかけてきました。
「よく来た、本当によく来てくれた。
生きているうちにお前に会えて本当によかった」
今までこんなに感情的になった祖父を見たことがなかったので、一瞬どう対応していいのかとまどってしまいました。
しかし、泣きながら手を握って離さない祖父を見ていると、自分の最後を悟ってお別れを言っているのだなと感じました。
私は何も言わずに祖父の手を強く握り、やせこけた顔を何度もなでてあげました。
祖父は涙を流しながら私の手をとり、その手に頬ずりしながらいつまでも手を離しませんでした。
その祖父がそれから1ヵ月後の9月30日に旅立っていきました。
子供たちみんなにお別れを言い、遺言を伝えて、自分の仕事をきっちりと終わらせて、88年の人生に幕を下ろしました。
「ありがとう、じいさん。じいさんの血はしっかりと私の中で生き続けています。
そしてその血を子供に受け継いでいきます。」
人の命はそうやっていつまでも受け継がれて、生き続けていくのだと思いました。
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