【気めぐる身体】
「気とは」
気とは元気ややる気、根気というような言葉からも連想されるように、生物を生かし、活力を与えている命そのものの働きといえます。一般的には気のせいなどといわれるような、気持ちの問題といったように捉えられている場合が多いようですが、東洋医学的にはもっとはっきりと物質的なものとして存在すると考えられています。
目には見えないがエネルギー的なものとして確実に存在する、例えば電気のようなものと考えていただければわかりやすいと思います。身体に欠かすことの出来ない「血」や「水」でさえも気が全身をめぐらせてくれなければ、身体に有害な「汚血」や「水毒」となり、病気の原因にさえなります。
「気が滞る」
このように生き物にとって大切な「気」ですが、現代社会のようにストレスが多かったり、言いたいことをぐっとこらえてばかりいると、全身をめぐっている「気」のめぐりが悪くなり、気の流れが滞ってきます。それを東洋医学では「気滞」といいます。「気滞」の特徴的な症状は張って苦しかったり、つかえた嫌な感じがすることでわかります。お腹が張って苦しく、タヌキのお腹のようにぱんぱんに張ってしまう人や、喉がつかえた感じがして苦しく、無意識のうちに咳払いする人がそうです。
「気滞」の対処法
このようなときは、まず発散させる方法を考えます。思いっきり体を動かして汗をかいたり、サウナに入って汗を流したり、カラオケで大声を出したりして、体の中にたまっている「気」をめぐらせるのです。食べ物ではネギや玉ネギ、ニラ、らっきょう、しそ、ミントなどが気をめぐらせてくれるものです。それでもダメなら漢方で滞った気をめぐらせる薬もあります。ただしこの「気滞」に関しては漢方専門の先生でなければよくわからない場合が多いので、漢方薬を始めるときは専門の先生に相談してみましょう。
「気が昇る」
気の働きが失調するのには「気滞」の他に気が昇るという状態もあります。気が身体の上の方に昇って全身をめぐらなくなっているので、広い意味では「気滞」になるのですが、気が昇っている場合には特有の症状が見られます。のぼせやすい、顔が火照る、人前に出ると上がりやすい、怒りっぽい、鼻血が出やすい、咳や鼻水がよく出る等の症状のうち2つ以上該当するのもがある場合、その傾向があると考えていいでしょう。
気は普段よく使っているところに集まりやすくなっていきます。人間は他の動物に比べると、頭ばかりを使っているために、頭に気が昇りやすくなっているのです。特に現代のような頭脳労働ばかりするような社会になってくると、よりその傾向が顕著になってきます。現代人は頭と目と手先だけを使いすぎて、足や他の部分はあまり使っていないので、使い方があまりにも偏ってしまっているのです。
「気を鎮める」
上に昇った気を鎮めるためには、普段から意識を下に向ける練習が必要です。そのためには気功や呼吸法が有効です。気功は一種のイメージトレーニングのようなものですから、上手になると自分の意識で気を下に鎮めることも出来るようになります。気功はなかなか一人ではうまくできないので、教室に通った方がいいでしょう。
時間がなくて教室は通えないという方には、呼吸法をお勧めします。特に寝ながらおこなう丹田呼吸法と足裏の呼吸法は寝る前、布団に入ったままで出来るので時間のない方でも続けやすい方法です。丹田呼吸法はへそと恥骨の中間にある丹田に手を当てて、息を吐いたときに丹田をへこませ、吸ったときに膨らませておこないます。慣れないとなかなか丹田が上手に動かないのですが、意識だけは丹田からずれないように注意します。この呼吸法は意識を鎮めるだけでなく、気力を増し元気をつけていく効果もあります。
足裏の呼吸法は、鼻から吸った空気が体の中を通って、足裏から出ていくイメージでおこないます。実際に足裏から息が出ていくわけではないので、意識的にイメージする必要があります。うまくできるようになると、足がぽかぽかと暖かくなってきます。これらの呼吸法は寝ながらやるだけではなく、通勤途中の電車の中でも出来ます。私がまだ東京で仕事をしていた頃は、よく通勤の電車の中で、ウォークマンでヒーリングミュージックを聴きながら気持ちを静める練習をしていました。そうすることで気持ちが穏やかになり、仕事中に患者さんやスタッフに優しい気持ちで接することが出来ました。
「気をめぐらせる」
このように心と身体を働かせるエネルギーそのものの「気」も全身をめぐらなくては害になる場合もあるのです。特にこだわりが多かったり、他人の評価ばかり気にする人はストレスをため込みやすいので、自然な気の流れが滞りがちになります。全身に気をめぐらせて快適な毎日を送りたいものですね。
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